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2006年10月23日
Topアンティーク > 古時計

●古時計(No.2):キンツレ(Kienzle)-WestMinsterChime その2

キンツレ(Kienzle)ウエストミンスターチャイムの修復・ 修理について

修復とは、破損した箇所を作り直すこと。
修理とは、こわれた所をつくろって直すこと。修繕。
この違い微妙ですが、修復個所とは破損したり無くなっている物を再現する事を、 修理とは塗装や動かない歯車などもとにあったものを手直しする事として分けてお話します。

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修理個所                                  

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元の画像からはわかりにくいのですが、塗装面の傷みはかなり酷くワックスを塗った程度ではとても直らないものでした。 上の画像からもわかるように、塗装面のヒビ割れにより今にも剥がれそうなものでした。
また、画像ではこれもわかりにくいのですが、文字盤のメッキ部分は腐食して大変醜いのです。
写真とは重宝なもので、撮り方によっては実物より数段綺麗に写るものです。これが良いところでも有り、騙されるところでもあります。 (笑)

そんなわけで、おもいきって塗装を全部はがしてしまいました。はがした木肌を見ても大変美しく、この「虎目模様」 が映える塗装をしてみたくなったのです。

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さらに、箱の中はかび臭く時計部分のサビの侵食はさらに進みそうでした。当然各歯車の調整や油の補充、振り子式天賦(テンプ) の調整などが必要でした。

また、折角のウエストミンスターチャイムです、その音が存分に奏でられるようにネジの緩みや制振にも気をつけました。

次に、修復個所です。                           

最初に手をつけた修復個所は、向かって右側の台座の「割れと欠け」です。割れは接着すればよいのですが、 欠けは無いのですから作るしか有りません。

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そして、3つ有るネジ回しのうち、向かって左側のネジのバネが折れています。ここは、時報を鳴らすための駆動源なのです。

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このバネ材の修復には苦労させられました。


 

 

2006年10月19日
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●ウェストミンスター・チャイム

「kienzle」の置時計の鐘の音を録音してみました。

IMG_6127-x

下の「キー」をクリックして下さい。(6時の時報です。)

  kienzle_key

ファイル形式:MP3(Mpeg1 Layer3)
音 質:192kbps/44.1kHz/Stereo
ファイルサイズ:1MB

いかがでしたか?! サウンド系にはまったく知識が無いので、音質には目をつぶって下さい。
雰囲気を味わっていただけたら、うれしいです。 正直、本物の音を再現するのは難しいです。

このメロディは、ロンドンの「ビッグベン」と呼ばれる大時計塔のチャイムと同じです。
正式な曲名は「ウェストミンスターの鐘」と言います。

300px-Bigben

聞き覚えのあるこのメロディは、日本の学校のチャイムと同じです。
ただし、本家は当然ビックベンで、毎日正午に奏でられる鐘のメロディーは4つの音で奏でられています。

現在は国会議事堂として使われている、ウェストミンスター宮殿に付属する時計塔で、
かつてはエドワード1世からヘンリー8世までの歴代の王が居住していました。
もともと時計塔に吊るされている13.5トンの巨大な鐘の愛称が、「ビックベン」でしたが、
現在は建物自体の呼び名となっています。


最初の鐘は、1856年に取り付けられましたが、16トンの特大サイズにもかかわらず、鋳造が下手だったのと、
ハンマーが重すぎたせいで、1回鳴らしただけでヒビが入り取り壊されました。

現在のものは2代目で、1859年ベケットの設計で鋳造されサイズはやや小ぶりになりましたが、
それでも直径2.74メートル、重さ13.5トンもあります。

また、ビッグベンの大時計塔はウエストミンスター地区にあるため、ロンドン市民の中には
このビッグベンを「ウェストミンスター・チャイム」と呼ぶ人もいます。

これが、「ウェストミンスター・チャイム」の由来だと思われます。

 

2006年10月16日
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●古時計(No.2):キンツレ(Kienzle)-WestMinsterChime その1

この古時計は、1822年創業、180年のドイツの時計史に名を刻むキンツレ社(Kienzle) のウエストミンスターチャイム置時計です。

WestMinsterChime その1 

木箱の緩やかなカーブ、優美な花のレリーフなど大変高級感に溢れています。
この堂々とした佇まい、他にここまで優美なウエストミンスターは見たことがありません。伝統のドイツ・ クラフトマンシップに基づいた物作りは、徹底して製造過程に生かされクォリティの高さが伺えます。

WestMinsterChime その1 

斜め横から見たときの、緩やかなカーブはまさに「匠」の技! 現代風に言えば3Dな曲線です。 恐らく現代の技をもってしても大変難しい作りであると思います。(3次元曲面の木の板を、それぞれ寸分の狂いも無く張り合わせていく!  これを最新設備の板金で作っても、時間とお金が途方も無くかかるでしょう! いやもしかしたら簡単には出来ないかも!)

そして、この木箱そのものがチャイムの音を増幅させ、優雅な音色を奏でてくれます。まるで弦楽器のつくりのようなこの木箱は、 「ヴァイオリン」を彷彿させます。そして、チャイムを奏でる銅製のバーを叩くハンマーには、革が使われています。 この革のハンマーで奏でる音色はまさに絶品!この一言に尽きます。
この革のハンマー! これがアンティークの証! 古く見えても樹脂のハンマーということも有ります。
(革のハンマーと樹脂のハンマーの音の違いは、電子ピアノとグランドピアノの違いかなぁ。)

 このキンツレ社 19世紀後期から20世紀初頭まで、世界中の富豪たちに愛され、 当時の技術の粋を集めて作られた時計なのです。ドイツの時計マイスターたちが心と技術と時間をかけ世界に送り出した逸品たちです。

WestMinsterChime その1

この箱の裏には、「32」と言う刻印がありました。これは想像でしかありませんが、32番目に作られた木箱であり、 複雑な構造上 それほど多く作れるとも作られたとも思えないのです。
サイズは、横幅約73.5cm、奥行き約15.5cm、高さ約23.5cm。
置時計としてもかなり大きい方です。この大きい箱の空間に反射し、奏でられるウエストミンスターの調べは、筆舌に尽くし難いのです。

最後に、ここの画像はこの古時計を購入した時のもで、修復修理後のものではありません。
(写真で見るときれいに見えますが、塗装には無数のヒビが入りとても見れたものではありません。)
その修復修理内容は次回以降お話します。