ああ、コーヒーのおいしいこと
一〇〇〇回の接吻よりすばらしく
マスカット酒よりも甘い
コーヒー、コーヒー
コーヒーはやめられない
わたしに何か贈ってくださるというのなら
わたしの好きなコーヒーが大歓迎
一七三二年、ドイツの社交界ではコーヒーが大流行していました。この流行を風刺して、偉大なる音楽家バッハがこの[カンタータ第二一一番コーヒーカンタータ」でした。歌はコーヒーなしでは夜も昼も明けないという娘と、その父親のデュエットで、その掛け合いのおもしろさも人々に好評でした。
ちょうどこの頃、社交界では大流行したものの、「女性がコーヒーを飲むと不妊症になる」とか「肌の色が黒くなる」といったデマが、まことしやかにささやかれていました。これは外貨の流出を防ぐために、庶民にコーヒーを買わせまいとした宮廷が流したものだったといわれています。呆れたバッハが風刺の意味をこめてこの曲を作ったといいます。バッハの数多い教会カンタータのなかにあっては異質のもの。ぜひ、一度お聴き下さい。